市役所の情報システム課にいた頃、一番大きな仕事がパソコンの一斉入れ替えでした。
市役所本体だけではなく、関連の外部施設や市立の小中学校まで含めて数千台規模。私はこのプロジェクトでチームリーダーを任されました。メンバーは5人です。
職務経歴書に書くと一行で終わる仕事ですが、実際に何をやったのかを順に書いておきます。
サポート終了は、待ってくれない
OSのサポートが終了すると、セキュリティ更新が止まります。
民間でも同じですが、行政の場合は住民の個人情報を扱う端末が含まれます。「もう少し使ってから」が許されません。
期限が先に決まっていて、そこから逆算する。これがこの仕事の前提でした。
最初にぶつかったのは「台数が分からない」だった
資産管理ソフトの数字は、現実と合わない
まずは資産管理ソフトで、部署ごとのおおまかな台数を把握しました。
これで済むと思っていたんですが、済みませんでした。
数年単位で見れば、組織は動きます。部署の統廃合があり、座席の配置が変わり、使わなくなった端末が倉庫に入っている。逆に、台帳にない端末が現場で使われていたりもします。
台帳と現場は、必ずずれていました。
結局、歩いて数えた
現地調査をして、正確な在庫台数を数え直しました。
地味です。しかも時間がかかる。でも、ここをさぼると、あとの工程が全部狂います。
発注台数が足りなければ、足りない部署の業務が止まります。余れば、公金を無駄にしたことになります。
このプロジェクトで一番時間をかけたのは、実はこの事前調査でした。
スペックの選定と、財政部署との交渉
次に、どんなパソコンを入れるかを決めます。
ここで困るのが、部署によって使っているシステムが違うことです。
文書作成が中心の部署と、重い業務システムを日々回している部署では、必要な性能が違います。全部を上位モデルにすれば安心ですが、予算は決まっています。
限られた予算の中で、なるべく性能の高いものを入れる。そのために、徒底的にリサーチしました。
その上で、財政部署と予算を交渉します。
ここで必要なのは技術力ではなく、説明する力でした。相手はITの人間ではありません。なぜこのスペックが必要なのかを、業務の言葉で説明できなければ通りません。

キッティングは、マニュアルが9割
発注して端末が届いたら、キッティングです。
数千台を、5人でさばきます。当然、全員が同じ手順でやらなければいけません。
一人だけ違う手順で進めると、その分の端末だけ設定が違うことになります。しかも、それが分かるのは配布したあとです。
だから、マニュアルを徒底して整備しました。
手順を番号で書き、迷いそうな箇所には画面の図を入れ、確認項目をチェック形式にする。新しく入った人が見ても同じ結果になることを基準にしました。
結果的に、これが一番効いたと思っています。
配布は「業務を止めない順」で組む
配布スケジュールは、効率だけでは組めません。
窓口を持つ部署を平日の日中に止めるわけにはいきません。月末や年度末に忙しくなる部署もあります。繁忙期は部署ごとに違う。
このあたりを事前にヒアリングして、順番を組みました。
作業自体は単純ですが、どの順番でやるかで、現場の負担が全然違います。
配り終わってからが本番だった
配布が終われば完了、ではありません。
環境が変われば、必ず問い合わせが来ます。以前と操作が違う、使っていたソフトが見当たらない、印刷ができない。
この対応が、しばらく続きました。
ただ、大きな事故は起こしませんでした。事前調査とマニュアル。この2つだけは手を抜かなかったからだと思っています。
この経験は、転職で評価されたか
正直に書きます。
公務員からWeb業界への転職では、ほとんど評価されませんでした。
未経験採用の入り口で見られていたのは、作れるか、改善できるかです。「数千台を事故なく入れ替えました」は、その問いの答えになっていません。
ただし、見てもらえる場面もあります。
社内SEやインフラ周り、あるいはプロジェクト管理を含むポジション。ここでは、規模と人数と期限を扱った経験として強みになります。
内定をもらった会社でも、この話はしています。ただ、決め手になったのはこちらではなく、休日に自分でやっていたブログのほうでした。
同じ立場の人へ
自治体の情シスで、同じような入れ替えを控えている人は多いと思います。
技術的に難しい仕事ではありません。難しいのは、台数と部署と期限を、同時に合わせることです。
そしてこの力は、自治体の中だけで使うには少しもったいないと思っています。
職務経歴書に書くときは、台数と人数と期間を必ず入れてください。「パソコンの入れ替えを担当」とだけ書くと、規模が伝わりません。
情報システム課での経験全体が、転職でどこまで通用するのかは市役所の情報システム課で6年|その経験は民間のIT転職で通用したかに詳しく書きました。

