市役所の情報システム課で6年働きました。
そのあと民間のIT・Web業界に転職しています。そこで思い知ったのは、「公務員の情シス」は、民間から見るとIT経験として数えてもらえないことがあるということでした。
この記事では、自治体の情報システム課が実際に何をしているのかと、その経験が転職市場でどう見られたのかを、分けて書きます。
いま市役所や役場の情シスにいて、民間への転職を考えている人向けです。
結論:仕事の幅は広いが、「IT実務経験」としては弱い
先に結論を書きます。
市役所の情報システム課の仕事は、外から見えるよりずっと幅広いです。ネットワークもサーバーも端末も、調達も予算も、職員からの問い合わせ対応も全部やります。
ただし、転職市場での評価はそれとは別でした。
「開発をしていない」「ベンダーに発注していただけ」という見られ方を、何度もされました。私は1回目の転職で50社以上落ちています。
なので、この記事は2つに分けて書きます。実際に何をしているのかと、それが外からどう見えるのかです。
転職そのものの話は市役所の情報システム課から、民間のIT業界へ出たに書きました。
住民の生活は、ほぼシステムの上にある
住民基本台帳、税、福祉、介護、会計。市役所で扱う業務は、ほぼすべて専用のシステムの上で動いています。
その上で、職員が使うパソコンがあり、ネットワークがあり、グループウェアがあります。
これらをまとめて面倒を見ているのが、情報システム課です。
仕事は大きく3つに分かれる
1. 庁内のIT環境を止めないこと
パソコン、プリンタ、ネットワーク。これらが止まると、窓口が止まります。
窓口が止まると、目の前に並んでいる住民の方が待たされます。証明書が発行できない、引っ越しの手続きが進まない。そういう事態になります。
だから、この仕事は動いて当たり前です。うまくやっても誉められません。止めたときだけ、話題になります。
2. システムの調達と管理
システムや機器には更新時期が来ます。そのたびに、仕様を決め、予算を取り、業者を選定し、契約し、納品を検収し、その後の保守を見ます。
ここが一番「行政っぽい」部分です。
民間なら「これが良さそうだから入れよう」で進むことも、行政では公平性を担保する手続きを踏まなければなりません。公金を使う以上、当然です。
ただ、時間はかかります。
3. 職員からの問い合わせ対応
パソコンが動かない。印刷できない。パスワードを忘れた。ファイルが開けない。
数百人規模の職員から、こういった連絡が日々入ってきます。
正直に書くと、時間のかなりの部分がここに持っていかれます。
一件あたりは短くても、件数が多い。そして、相手は同じ庁舎の同僚なので、断りにくい。

実際には、IT以外の仕事も多い
ここが、外からは一番見えにくい部分だと思います。
総務
消耗品と備品の台帳管理。毎月の棚卸。不足していれば発注。
職員の勤怠管理もやります。欠勤や時間外を日々入力し、月毎に集計し、年度ごとに有給休暇の付与をとりまとめる。
財務
公会計での歳入歳出管理です。
日々の請求書払いと入金処理。月ごとの月額払い処理と、予算執行状況の報告。年度末の決算書作成。次年度の予算編成では、各事業の担当者と打ち合わせを重ねます。
つまり、一日のうちITに使える時間は、全体の一部だけです。
「情報システム課にいました」と言うとIT専門のように聞こえますが、実態はかなり違います。
民間のIT職との一番大きな違い
評価される軸が違います。
民間のITの仕事は、大まかに言えば「作る」「改善する」「数字を伸ばす」ことで評価されます。
自治体の情シスは、「止めない」「正しく調達する」「間違えない」ことで評価されます。
どちらが上だという話ではありません。ただ、転職を考えるときには、この差がそのまま返ってきます。
情シスにいて身につくもの、つかないもの
自分の経験で、正直に書きます。
身につくもの
規模の大きい環境を、事故を起こさずに回す感覚。調達と予算の実務。立場の違う相手に説明して合意を取る力。それから、期限を絶対に守る感覚。
身につかないもの
コードを書く力。数字を見て改善する経験。そして、スピードです。
この「つかないもの」のリストが、そのまま民間のIT企業が採用で見ている項目と重なります。
私はここを分かっていなくて、50社以上落ちました。
情シスから転職を考えているなら
情報システム課の経験は、捨てる必要はありません。社内SEやインフラ周りでは、確実に強みになります。
ただし、それだけでは入り口が狭いというのが、実際にやってみた感想です。
自分の場合、最終的に効いたのは休日にひとりでやっていたことでした。その話は別の記事に書いています。
また、情シスでやった中で一番大きな仕事だった、数千台規模のパソコン入れ替えについても別途書きました。職務経歴書に書くなら、この手のプロジェクトが一番使えます。
情シスの経験が、外の会社でどう評価されるのか。判断材料が欲しいなら、まず市場価値を確かめるところから始められます。
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