市役所の情報システム課にいます、と言うと、こう思われることがあります。
「ITの仕事をしているなら、民間のIT企業にも行けるでしょ」
私も、そう思っていました。
結果から言うと、50社以上から不採用をもらいました。
この記事では、市役所の情報システム課で何をやっていたのか、その経験が転職市場でどう見られたのか、そして実際に何が武器になったのかを書きます。
市役所にも、IT部署はある
あまり知られていませんが、自治体にもITを見る部署があります。
庁内のパソコン、ネットワーク、業務システム。住民情報を扱うシステムから、職員が使うグループウェアまで、すべて誰かが面倒を見ています。
その誰かが情報システム課です。
私は工業系の高校で情報処理を学んでいたこともあってか、最初の配属がここでした。そして、ここが一番長くなりました。

情報システム課でやっていたこと
数千台規模のPC入れ替え
在籍中に一番大きかったのが、OSのサポート終了にともなうパソコンの一斉入れ替えです。
市役所本体だけではありません。関連の外部施設や市立の小中学校まで含めて、数千台規模。このプロジェクトでチームリーダーを任されました。メンバーは5人です。
やったことを順に書くと、こうなります。
資産管理ソフトで部署ごとのおおまかな台数を把握する。そのあと現地調査で正確な在庫台数を確認する。必要なマシンスペックを選定し、財政部署と予算を交渉する。発注し、納品後のキッティングと配布スケジュールを組む。配布後のトラブルと問合せに対応する。
難しかったのは、部署によって必要な台数も使っているシステムも違うことです。窓口業務を止めるわけにはいかないので、事前調査だけは徹底しました。
もうひとつやったのが、マニュアルの整備です。メンバー5人が全員同じ品質でキッティングできなければ、どこかで必ず事故が起きます。
この2つで、大きなトラブルを出さずに終えられました。
総務・財務との兼務
もうひとつ書いておくべきなのは、自治体の情報システム課はITだけをやっているわけではないことです。
私は総務と財務を兼務していました。消耗品の台帳管理、毎月の棚卸、職員の勤怠管理。公会計での歳入歳出管理、予算編成、決算。
つまり、一日のうちITに使える時間は全体の一部だけです。
これがあとで、大きく効いてきます。

それでも「IT経験者」とは見なされなかった
書類選考で落ち続けた
転職活動を始めて、最初にぶつかったのがここです。
6年近くIT部署にいて、数千台規模のプロジェクトでリーダーをやっている。なんとなく、評価されると思っていました。
落ちました。何度も落ちました。最終的に50社以上です。
3社目くらいまでは「たまたま相性が悪かった」と思えます。10社を超えると、自分の見立てが違うと認めるしかなくなります。
民間が求めていたのは「運用」ではなく「制作と改善」だった
落ち続けるうちに、だんだん分かってきました。
自治体の情報システム課の仕事は、大きく分けると「すでにあるものを止めない」仕事です。
パソコンが壊れたら直す。ネットワークが落ちたら復旧させる。システムの更新時期が来たら入れ替える。事故を起こさないことが、何より優先されます。
一方で、民間のIT企業が採用で見ていたのは「新しく作れるか」「数字を改善できるか」でした。
コードを書けるのか。サイトを作ったことがあるのか。売上やアクセスを伸ばした経験はあるのか。
この問いに対して、「数千台のパソコンを事故なく入れ替えました」は、残念ながら直接の答えになっていません。
プロジェクト管理の経験としては価値があります。ただ、未経験採用の入り口では、そこまで見てもらえないことのほうが多いです。

転職で武器になったのは、業務経験ではなく独学だった
では、何が効いたのか。
休みの日にひとりでやっていたことでした。
ブログ運営
市役所で働きながら、ブログをやっていました。安定して月5万円くらい、いちばん良かった月で50万円ほどの収益になりました。
面接では、この話が一番伝わりました。
自分でサイトを立ち上げて、記事を書いて、アクセスを見て、改善して、実際に収益につなげた。これは、規模は小さくても商売の一通りです。
WordPress、HTML/CSS
ブログをやっていると、いやでも触ることになります。
テーマをカスタマイズする、表示が崩れたら直す、表示速度を気にする。このあたりは、実際に自分のサイトで困ったことがないと身につきません。
アクセス解析
どのページが見られていて、どこから来ていて、どこで離脱されているのか。
これを見る習慣があるかどうかは、面接で意外と伝わります。
この3つは、どれも市役所の仕事とは関係ありません。
でも、この3つがなかったら、私はどこにも入れなかったと思います。
情報システム課からIT業界を目指す人へ
自分の失敗を前提に書きます。
在職中に、手を動かした証拠を作ってください。
ブログでも、自作のサイトでも、何かのツールでも構いません。URLを出して「これを作りました」と言えるものが、ひとつでもあるかどうかで全然違います。
情報システム課の経験自体は、捨てる必要はありません。規模の大きい環境を事故なく回した経験は、社内SEやインフラ周りでは強みになりえます。
ただ、それだけでは入り口が狭い。これは事実として伝えておきます。
もうひとつ。本当にエンジニアになりたいのかは、先に確かめたほうがいいです。
情シスの仕事が好きだったのか、コードを書くのが好きなのか、それとも数字を動かすのが好きなのか。私の場合は最後でした。だからいまはWebマーケティング側にいます。
いまのキャリアに、どうつながっているか
情報システム課→Webコンサル会社→食品メーカーの通販部門。
一見するとばらばらですが、つながっている部分があります。
市役所では、システムを発注する側にいました。予算を取って、仕様を決めて、業者に頑ばってもらう側です。
次のWebコンサル会社では、受注する側に回りました。
両方を見たことで分かったことはかなりありますが、長くなるので別の記事にします。
そしていまは、自社のECサイトを運用して数字を追っています。自分たちのものを、自分たちで改善する側です。
回り道だったとは思っていません。ただ、もし市役所にいた頃の自分に一言だけ伝えられるなら、「情報システム課にいることを、転職の武器だと思わないほうがいい」と言います。
武器になるのは、その外で何をやったかのほうです。
情シスから民間のITへ出るなら
この記事に書いたとおり、私が評価されたのは情報システム課の業務経験ではなく、働きながら独学でやっていたほうでした。
ただ、独学の成果を自分ひとりで棚卸しするのは難しいです。「これは実務経験として通るのか」が、外から見ないと分かりません。
私は1回目の転職で50社以上落ちてから、やっとそこに気づきました。先に外の評価を見ておけば、落ちる数は減らせたと思います。
- 年齢制限なし
- 全国
- 登録のみ・面談なし
エージェントではなく、登録すると想定年収と適性診断が出るサービスです。担当者から電話が来る形式ではありません。
地元に残るつもりの人でも使えます。情シスの経験がいまどう評価されるのか、まずここで見るのが早いです。
- 18〜29歳
- 関東・関西・東海
- 高卒以上・未経験可
未経験からITエンジニアを目指す人に特化した就職サポートです。IT学習のサポートが付いています。
ただし勤務希望地が関東・関西・東海に限られます。地元に残るつもりなら対象外です。
※いずれも無料です。私自身はこれらを利用していません(私が使ったのはリクルートエージェントです)。条件で選べるように並べています。登録しても、必ず転職しなければいけないわけではありません。
地元に残るつもりなら、上のミイダスだけで十分です。ウズウズITは勤務地が関東・関西・東海に限られるので、地方で働き続けたい人は対象外になります。

