高卒で公務員になった人間が、そのあとどうなるのか。
調べても、あまり出てきません。
はじめまして、なおです。工業系の高校を出て地方都市の市役所に入り、9年勤めて辞めました。いまは地方の食品会社で、通販サイトの運営とマーケティングを担当しています。
このページには、私がどこをどう通ってきたのかを時系列で書いておきます。うまくいった話ばかりではありません。転職活動では50社以上落ちましたし、最初の転職先は、結果的に失敗でした。
高校を出て、市役所に入った
工業系の高校で情報処理を学んで、卒業してそのまま市役所へ入りました。大学には行っていません。
高卒で公務員になると、周りからは「安定していていいね」と言われます。実際、その通りだと思います。毎月決まった日に給料が入り、賞与があり、大きな問題を起こさなければ職を失うこともない。社会的な信用も高い。
9年勤めて辞めた人間が言うのもおかしな話ですが、公務員の安定性は本当に強いです。これは、辞めたあとのほうがよく分かりました。

9年間で経験した3つの部署
情報システム課
最初の配属が情報システム課で、ここが一番長くいました。
市役所にIT部署があると言うと驚かれることがありますが、庁内のパソコン、ネットワーク、業務システムは、すべて誰かが面倒を見ています。その誰かが情報システム課です。
在籍中に一番大きかった仕事が、OSのサポート終了にともなうパソコンの一斉入れ替えでした。市役所本体だけでなく、関連の外部施設や市立の小中学校まで含めて数千台規模。私はここでチームリーダーを任されました。メンバーは5人です。
資産管理ソフトでおおまかな台数を把握して、そのあと現地調査で正確な数を数える。必要なスペックを選定して、財政部署と予算を交渉する。発注して、納品されたものをキッティングして、配布スケジュールを組む。配って終わりではなく、そのあとのトラブル対応まで続きます。
部署によって必要な台数も使っているシステムも違うので、業務に影響が出ないよう事前調査だけは徹底しました。あとは、メンバー全員が同じ品質で作業できるようマニュアルを整備したこと。この2つで、大きな事故を起こさずに終えられたと思っています。
市民課
そのあと市民課に移りました。
窓口業務です。ここで初めて、住民の方と毎日直接やり取りをするようになりました。
この3年間で見たものは、後の判断にわりと影響しています。詳しくは別の記事に書きます。
会計課
会計課では、公会計での歳入歳出を扱いました。
款・項・目という分類で予算を管理する、行政特有の会計です。日々の請求書払いと入金処理、月ごとの月額払い処理と予算執行状況の報告、年度末の決算書作成。次年度の予算編成では、各事業の担当者と打ち合わせをして、新しい事業のヒアリングをして、と細かい調整が続きます。
正確性と期限が、とにかく厳しく求められる仕事でした。
なお、総務と財務はどの部署でも兼務していました。備品の台帳管理、毎月の棚卸、職員の勤怠管理。地味ですが、これも9年間ずっとやっていた仕事です。
ひとつだけ、自分から動いてよかったと思っていることがあります。毎月の予算執行状況を上長に報告するのに、システムから出したCSVを報告書へ手で転記していました。これをExcelのマクロで自動化して、年間で36時間ほど削れました。

働きながらブログを始めた
月5万円、そして最高で月50万円
市役所で働きながら、Webとブログを独学で勉強していました。
最初は本当に何も分からないところからです。それが少しずつ形になって、安定して月5万円くらい稼げるようになり、いちばん良かった月では50万円ほどの収益になりました。
「給料以外でも稼げる」と知った
金額そのものより、この経験で知ったことのほうが大きかったです。
給料以外でも、お金を稼ぐことができる。
当たり前のようですが、公務員として働いているとこの感覚はなかなか持てません。収入は給料表で決まっていて、頑張っても急に増えることはないし、副業もできない。
同時に、Webサイト制作、HTMLやCSS、WordPress、アクセス解析、Webマーケティング、広告といったものに興味が出てきました。これが、あとの転職につながっていきます。
市役所を辞めると決めるまで
辞めた理由を一言でまとめるのは難しいです。「公務員が嫌だった」という単純な話ではありません。
強いて挙げるなら、意思決定の遅さ、決まりごとの多さ、承認フローの煩雑さ、職場内の政治。それから、市民の方から向けられる視線です。仕事をしていないと言われる側に立ち続けるのは、想像よりこたえます。
そしてもうひとつが、副業ができないことでした。
ブログで自分の力でもお金を稼げると分かったあとに、それを制限される環境にいる。この矛盾が、だんだん大きくなっていきました。
ただ、辞めるまでには時間がかかりました。9年です。
転職活動は、思っていたより厳しかった
9年も市役所で働いたのだから、ある程度は評価されるだろう。
そう思っていました。結果から言うと、そうではありませんでした。
50社以上から不採用をもらいました。
公務員としての経験と、民間企業が求めている経験は違います。とくに未経験の業界へ行こうとすると、この差がそのまま跳ね返ってきます。
書類で落ち続けるうちに、だんだん分かってきました。企業が知りたいのは「公務員として何をしてきたか」ではなく、「うちに来て何ができるのか」なのだと。
最終的に効いたのは、市役所での9年ではありませんでした。休みの日にひとりで触っていた、ブログとWordPressのほうでした。
Webコンサル会社で、初めて民間を経験した
最終的に、Webコンサル会社に拾ってもらいました。
仕事はWebサイト制作の企画提案です。営業として、初回のヒアリングから提案書と見積の作成、クロージングまで。社内の制作チームと顧客のあいだに立って調整し、公開したあとの保守運用も担当しました。3年間で18サイトを担当しています。
WordPressのカスタマイズも自分でやりました。HTML、CSS、PHP。それからWeb広告の運用と、出稿後の分析・改善提案レポート。市役所時代に独学していたことが、初めて仕事になった実感がありました。
ただ、この会社は率直に言ってブラックでした。
タイムカードは18時に切りますが、実際には連日24時過ぎまで働いていました。ここは別の記事に詳しく書きます。

いま、食品メーカーで通販とマーケティングをしている
受託から、事業会社へ
いまは地方の食品会社で、マーケティング本部の通販部門にいます。
担当は自社ECと、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング。それにWeb広告の運用、アクセス解析、キャンペーンの企画、商品ページの改善です。
Webサイトを「作って納める側」から、「運用して数字を追う側」に回りました。
大きく変わったのは、自分で仕事を取ってこなければいけないという焦りが減ったことです。いまは、自社の商品をどう魅力的に見せて売上をつくるかを考える仕事なので、単純にやっていて楽しい。
この転職では、面接でWebサイトの運営実績とマーケティングの知見を高く評価してもらえました。公務員から転職しようとしたときとは、まるで違いました。
早く帰れるようになって、副業が伸びた
給料は、極端に多いわけではありません。市役所を辞める前と、額面はほとんど変わっていないくらいです。
変わったのは、早く帰れるようになったことです。
その時間を副業に回せるようになって、いまは本業とは別に年間240万円ほどの収入があります。副業ができないからと思って市役所を辞めた人間が、いまそうなっている。ここは自分でも、少し不思議な気持ちがあります。
このブログで書くこと
「公務員 辞めたい」で検索して出てくるページは、だいたい2つに分かれます。
転職サービスを運営する会社が書いた一般論か、辞めた人が一度だけ書いた感想か。
どちらも読みましたが、私が知りたかったことは書いてありませんでした。高卒だとどうなるのか。地方に住んだままでも動けるのか。辞めた先が失敗だったらどうなるのか。年収は実際いくらになるのか。
このブログでは、そのあたりを書きます。
先に断っておくと、私は「公務員を辞めたほうがいい」とは思っていません。公務員の安定性は本当に強いですし、辞めて失うものも確かにあります。辞めずに残るという判断も、まったく問題ないと思っています。
大事なのは、辞めるか残るかを決める前に、判断できるだけの材料を持っておくことだと思います。
その材料になれば、それでいいと思っています。
実際に動くかどうかを判断する材料として、条件で選べる転職サービスをこちらにまとめています。
